ためていたパワーを一気に爆発させて勝つ

ケアンズ唯一の日本人ジョッキー 
賀谷祥平

 

Kaya

 

Profile
賀谷祥平(かや・しょうへい)
28歳 広島出身。2003年8月COFFS HARBOUR(コフスハーバー)競馬場カップーデーにてデビュー、同11月MOREE(モーリー)競馬場で初勝利。
これまで58の競馬場で騎乗。3シーズンで778戦79勝(5/17現在)。NSW州ARMIDALE(アーミデール)、TAMWORTH (タムワース)、MUSWELLBROOK (マスウェルブルック)、QLD州GOLD COAST (ゴールドコースト)、INNISFAIL(イニスフェイル)、VIC州EUROA(ユーロア)を経て、現在、オーストラリア、ケアンズ在住

 

野球やサッカーに限らず、日本人スポーツ選手が海外で活躍する姿はまさに感動!
今回はケアンズで活躍する唯一の日本人ジョッキー、賀谷祥平さんをご紹介します。

 

馬が好きだったんです、乗る方ではなくて買う方が…

なぜジョッキーに?の質問の答が上のコメント。
賀谷さんは東京の大学を卒業後,就職せずにオーストラリアに来た。
日本にいる時にオーストラリアにある競馬学校へ入れば、ジョッキーになれることを知ったからだ。

その動機は明快。「日本でレースを見ていてなりたくなっただけ。」子供が野球選手に憧れるように純粋に、迷うことなく道を選んだ。

 

当時はゴールドコーストからメルボルンにかけていくつかの競馬学校があり、大きいところでは毎年20〜30人の新入生がいたが、賀谷さんが選んだのはNSW州のアーミデールにあった小さな競馬学校。生徒は賀谷さん一人だけだった。

朝から馬房(馬がいる部屋)の掃除、馬の手入れ、騎乗の練習、たまに座学と朝から夕方までみっちり、休みなし。マンツーマンの特訓が続く。

半年間学校に通い(ちなみに日本のJRAの競馬学校、騎手コースは3年制。)、その後1年半各地の学校や厩舎をまわる修行と模擬レースを繰り返す。

 

一番苦労したことは競走馬の力が強くて最初は全く抑えられなかったこと。またジョッキー独特の競走馬の乗り方の修得で、中腰で乗って全身、特に足腰を使うので筋肉痛で足がガクガクに。これは今でも疲れるとか(笑)。

 

当時他の学校には、賀谷さんのように日本からジョッキーの勉強にきている人もいた。現在でもオーストラリア国内でレースに出場している日本人ジョッキーはNSW、QLD合わせて7〜8人程いる。
ジョッキーになるための制限はないが、プロになったあかつきには、勝てなかったらそれまで…という厳しい勝負の世界に生きることになる。ジョッキーは自分からレースにエントリーするのではなく、調教師から指名されて、初めて騎乗できるため、勝てない騎手には指名は来ないのだ。

 

ためていたパワーを最後に一気に爆発させて勝つんです

NSWでレースに出ていた賀谷さんがケアンズに来たのは昨年6月。知り合いの調教師を通じてだった。
彼が副業でやっていた配管の仕事で、サイクロン後の復興工事のためイニスフェイルに来た際、他の調教師に賀谷さんの話をしたところ、指名が来たのだ。

 

ケアンズに来る前5年間のほとんどは日本人のいない町での活動。もちろん日本食もなければ、シドニーやブリスベンに出るのにも5〜600キロあり、なかなか都市へ行く機会もなかった。そろそろ日本語でのコミュニケーションも恋しくなってきていた頃だったとか。

 

ケアンズはお好きですか?と聞くと、「暖かいし、海はあるし、日本人はいるしオーストラリアの町では一番好きです。初めてこっちに移ってきた時は信号もあり、ビルもあり大都会に見えてうれしかったです(笑)。」

 

ケアンズとは言っても、普段仕事の中で接するのは圧倒的にオージー。まわりのオーストラリア人との関わり方で心がけていることはと尋ねると「性格のせいもありますが黙ってないで、言いたいことは言わせてもらうぞ、ってスタンスではいます。」と、自らをコントロールし、勝負の世界で生きる彼らしい発言が返ってきた。

 

レースは毎日ある訳ではなく、指名が来ればケアンズ、アサートン、イニスフェイル、タウンズビルまで各地で開かれるレースに出る。
今までに約800レースに出場し、騎乗した馬は500頭以上!当然相性の良い馬もいれば悪い馬も。

一番良かった馬は?と聞くと、「それがケアンズの馬で,5戦戦ってなんと4回優勝しました!」

勝つために心がけているのは「ポジティブでいくこと」。
「弱い馬でもひょっとしたら勝てるかもとか、不利な枠(外側スタートの方が内側に入りにくいので概して不利)でもいいように考えるようにしてます。あとはやはり体重キープでしょうか。そしてレースではためていたパワーを最後に一気に爆発させて勝つんです。」

 

毎朝5時から馬の調教の手伝い、これは毎日約3時間、レースコースで馬に乗る。
近くで見たことがある人はご存知の通り、競走馬はかなり大きい。走るスピードが時速60〜70kmにも達する馬をコントロールしながら乗ることを考えると、使う体力は相当なもの。

実際の調教は、競馬場の調教トラックを2周、週に1,2度レース時と同じ速いスピードで最後の400〜600mを疾走。
その他の日はゆっくりのペースでトラックを2周。

 

陸上選手で例えれば、ストレッチや軽い運動だけの日と、本番さながらの全力疾走で流す日を組み入れてバランスをとっているのだ。馬もジョッキーも日曜日は定休でゆっくり休養。レース当日は調教後移動して午後からのレースのため競馬場に向かう。多い日は1日で4〜5レースに出走するそうだ。

 

「もっともっと日本人の方にも見に来て欲しい」

オーストラリアでは競馬は3大人気スポーツの一つ。競馬場も日本と違い、コースと観客席が近いのが一番の特徴。

 

観客も家族連れの姿が多い。これはレースの合間に様々なアトラクションや発表会があり、子供達も楽しめるようになっているためだ。
毎回何かテーマが決まっているのも特徴。

 

中でも、今年は9月7・8日に行われる”ケアンズ・アマチュア”は、ローカルが着飾って出かける一大イベントだ。外国での競馬観戦は住んでいる人だけでなく観光で遊びに来た人にも新鮮なはず。みんなで感動しに行こう!

 

編集後記
インタビューの数週間後(6/16)に行われたレースで見事1着を勝ち取っていました。普段の非常に淡々とした自然体からは想像できない、本番で爆発する勝負師の集中力はさすがです! Kazu

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