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エッセー

新天地を求めて Part.2

「あなたにとっての幸福とは?」と聞かれて、即座に答えられる人は少ないでしょう。
休暇もほとんど無く仕事に明け暮れる日本のサラリーマン達には、
その疑問を持つ余裕さえないような気がします。
たとえ時間の余裕があっても、深く考え出すと
それはもう宗教や哲学に助けを求めるしかないかもしれません。
でも、それを明快に答えてくれる人たちに会うことができるのも、
ここオーストラリアの魅力です。

友人の紹介で出会ったJosef(ジョセフ)とHedwig(ヘドヴィック)夫妻は、
広大な農地(32.3ヘクタール)をDimbulah 近くに購入し、
オーガニックパンプキンを栽培して、パンプキンオイル、シードを作っています。

ザルツブルグ出身のジョセフはオーストラリアに来る前は造園師として活躍し、
イタリア、フランスなど各地を回ってビジネスを展開していました。

自宅以外にも別荘を持ち、長い休暇には世界各国で
スキューバーダイビングを楽しむというゴージャスな生活。

しかしそれでも「心はいつも何か満たされていない」生活でした。
暮らしていくのに充分なお金を持っていても、
通帳を眺めながら「まだ足りない。もっと稼がなければ」と思い、
いつも物質的な豊かさだけを求めていたのです。
人に対しても、「自分のために何をしてくれるか、何を与えてくれるか」が重要で、
「その人自身を見るのでなく自分にとってメリットがあるかないか」
が全ての判断基準でした。

ケアンズのエッセー 

ご自慢のパンプキンと

経済的には何ひとつ不自由ない生活を家族にさせていた、と自負していたにもかかわらず、
妻も娘たちもそんな彼としだいに距離をおくようになり、ついには去っていきました。

そして、ジョセフは、自分の生き方に疑問を持ち、
物質的な豊かさより心の幸福に目が向くようになっていったのです。

その後再婚。
新しいパートナー、ヘドヴィックと休暇で訪れたケアンズに強く心を惹かれ、
すぐに家を購入しました。

そしてその時偶然知り合ったオージーに“Tee tree oil” を送ってもらい、
ヨーロッパで販売するというビジネスを始めたのです。
一年のうち3分の2を母国オーストリアで過ごし、
寒い冬の間は真夏のオーストラリアで過ごす。
これがジョセフたちの最初の計画でした。

その後ビジネス・パートナーを組んだオージーから
「“Tee tree oil”を自分たちで生産したらどうか」という提案を受けました。
そしてビジネスビザを取得。広大な農地を買って生産を始めました。

しかし間もなく、1リットル50ドルだったオイルが25ドルに暴落してしまったのです。
パートナーのオージーは「売り上げの半分のお金を送金する」という約束を破り、
さらに赤字は増え続け、ついにはせっかく購入した農地を売るしかなくなりました。

ビジネスはあっけなく終わったのです。
やはりその土地に住むこともせずに
ビジネスを行うのは難しいと思い知らされました。

普通ならそこであきらめてしまう人も多いと思いますが、
ここからジョセフの挑戦が始まりました。

腹をくくってオーストラリアに居を移すことを決心したのです。
オーストリアでの資産を全て売り、そのお金でもう1度農地を購入しました。
「45歳までオーストリアで生きてきたのだからもう十分。
残りの人生は自分を変える意味でも新しい場所でがんばってみよう」と。

以前から興味のあったオーガニック・フードに着目し、
オーストリアで人気のオーガニック・パンプキンを栽培して、
身体に優しいオイル、シードを作るという構想が出来上がりました。

彼はたったひとりでリサーチを重ねました。
その間は貯金を切り崩すしかありません。
そして周りの人たちから、「外国人には絶対無理」と言われ呆れられながらも、
政府が行っている地元のビジネスをサポートする基金に何度も応募し、
2つもの奨励基金を獲得したのです。
「土地もある。奨励基金も受けた。もうやるしかない!」
これが正直な思いだったと言います。

実は私は2年前にもここを訪れました。
その時には、広大な土地にパンプキンがあちらこちら無造作にゴロゴロと散在し、
熱く夢を語るジョセフを横目に見ながら、
「こんな状況で、彼らは果たしてやっていけるのかしら?」と半信半疑でした。

しかしその後、少しずつですが彼らは確実に前進していったのです。
この夏久しぶりに彼らを訪ねると、オーガニック・ファームの経験と知識が豊富な
新しいパートナーを紹介され、
さらにパンプキン・オイルとシードを作る、新しい機械がそろった部屋に通されました。

そしてお昼のBBQには、おつまみには最高の、
ご自慢のオーガニック・パンプキン・シードと、
オーガニック・パンプキン・オイルを使った自家製サラダが並びました。
そのおいしかったこと!

パンプキン・シードからとったオイルは鮮やかなグリーンで
その風味は高級なオリーブ・オイルに勝るとも劣らないものでした。

(左)パンプキンの収穫  (右)自宅から見たお気に入りの風景

 

「都会の生活を知りつくしているあなたたちにとって、
町から100キロも離れ、現金収入も少なく、
肉体労働の多いここの生活は幸せですか?」私は思い切って質問してみました。

奥さんのヘドヴィックは、「見て!我が家にはカーテンもないのよ。
この大きな土地では誰からも見られることはないから。
それに、ここに来て8年間ずっと健康で、病院に行ったこともないの。

周りの農家の人たちと協力して、野菜、果物、肉も、
出来るだけ身体にやさしいオーガニックにしているし、
甘いものが食べたくなったら庭に出て蜂蜜を採ればいいわ。

オーストリアに住んでいたとき、ジョセフは、ストレスのためか、
タバコもアルコールも半端な量じゃなかった。
でもここでは、ほとんど必要ないみたい。心も身体も健康そのものよ!」
と自信にあふれた答えが返ってきました。

ジョセフも笑って答えます。
「見てごらん、この景色。この湖と森を眺めながら2時間ここに座っているだけでも、
水の音、鳥の声、雲の動き、緑の変化を感じて、飽きることがないんだ。
オーストリアでは休暇中でも仕事のことを考えていたんだからね。
今は何とか食べていくだけのお金しかないけど、一体どちらが幸せだと思う?」

自分の幸せがどこにあるかは、人それぞれ違うでしょう。
彼らの場合、それをオーストラリアで見つけたようです。

少し前まで、オーストラリアへの移民は、祖国の苦しい状況から逃れるため、
また一攫千金を夢見て、という人たちが大多数でした。

しかし最近私が出会った、40、50才台で移住してきた人たちの中には、
母国で医師として働いていた韓国人のタクシー運転手、
母国では大きな歯科医院を経営していたドイツ人の養鶏場主など、
以前の移民の範疇には入らない人たちが増えてきたように思えます。

彼らもまたジョセフと同じように心の豊かさを求めて、
ここでの生活を選択したのかもしれません。
もちろん、新天地を求め、自分の夢を実現することは簡単ではありません。
そこには努力も必要だし、時には大きな挫折もあるかもしれません。
しかし他の人がなかなか出来ないことを実行するには、
やはりパワーとエネルギーが必要なのは確かでしょう。

最後に、ジョセフはさらに大きなビジョンを語ってくれました。
「この地ではまだまだオーガニック・ファーマーは少ないけれど、
みんなで知恵を絞り、知識を分かち合い、
人の身体にやさしいオーガニック・フードを
世界中にもっともっと広げていきたいんだ。」


今回は誰にでも出来る簡単パンプキンパイをご紹介します。カボチャのクリームを市販のパイシートに包むだけですが、粉砂糖をふりかければ、おしゃれなデザートに変身します。今年のハロウィーンには間に合いませんでしたが、来年のメニューにいかがですか?

◎パンプキンパイ

○材料(4人分)

・カボチャ・・・300g

A
・バター・・・10g
・砂糖・・・25g
・卵黄・・・1個
・生クリーム・・・20g
・シナモンパウダー・・・少々
・冷凍パイシート

パンプキンパイ

 

○作り方

1.カボチャを蒸し器で蒸す

2.皮を取り、熱いうちに裏ごしてAを加えてよく混ぜる

3.パイ生地を2〜3mmの厚さにのばして正方形にカットする(カップの大きさを考えて)

4.プリンカップに生地を敷き2を入れて包む

5.オーブンを200℃に余熱し20分焼き色がついたら、さらに160℃で10分焼く

6.余熱が取れたら、粉砂糖をふりかける

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