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趣味のお料理を通して、地元の人と交流し、オーストラリア家庭料理の深さに驚いた“のりさん”こと豊永典子さん。家庭の味とともにオーストラリア人のライフスタイルを紹介してもらいます。


その3 ダルおじさんのミートパイ

▲パイ作り中のダルおじさん。

 ご主人や恋人にケーキを焼いてあげて、もしその人から「焼きが足りない」なんて言われたら、もう2度と作るもんか、と思いますよね。奥様を怒らせたら大変なことになるのヨ。それはオーストラリアでも同じこと。
 若い人の間では、「Wife is always right.」という言葉があるそうですが、私もこの言葉には "全面的に賛成!" です。
 エドナ
(第一回目に登場)のご主人ダルが、ケーキの焼き加減についてエドナに文句を言ったとき、そのケーキを教えてもらっていた私は、「大丈夫かなあ」とドキドキしてしまいました。
 エドナもさすがにムッ!とした様子でしたが、「じゃあ、あなたがどうぞ」と。先生がダルに代わりました。このあしらい方が当意即妙。是非とも見習いたいところです。
 料理好きなエドナがすんなりと座(キッチン?)を明け渡したのは、エドナもダルの料理の腕を認めているから。ダルはベースホスピタルのシェフだったのです。その上、2人が19才と16才で駆け落ち同然の結婚をしてから、もう55年以上も一緒に暮らしていて、その年季がこうしたやりとりを可能にしているのだと思います。

 シェフの他にもダルは様々な顔を持っています。美容師だったこともあり、エドナの髪は今もダルまかせです。
「我が家の犬は、たまに美容院に行くのに、私は結婚以来一回も美容院に行ったことがないのよ」
 これには、ビックリ!でもご主人が専属の美容師なんて贅沢!とも思いますが…。

▲ブッシュの時に使ったQuart Pot。これにティーを入れて飲んだとか。

▲オージージョークをおひとつ。
"Lovely Edges !"(縁どりが綺麗だネ!)
"I used false teeth !"(入れ歯を使ったんだよ!)

 経験豊富なダルの話題の中で一番の私のお気に入りは、ブッシュの話。
 二人がまだ新婚の頃、ダルの仕事は郵便屋さん。といっても、バイクや自転車で郵便を配達するのではなく、馬でブッシュに住む人々の家を回っていたそうです。
 高性能な四駆が発達した現代でさえ、ブッシュに入るのはガイドがいないと危険といわれていますが、ダルは郵便物を鞄に詰め6日間かけてブッシュを回り、1日休んでまた出発という生活でした。
 エドナは子育てを一人でしなくてはいけなかったので、一番辛い時期だったと言いますが、ダルは仕事を結構楽しんでいたようです。この時期のダルについては、"the last packhorse mailman" として本にも紹介されています。
 ブッシュでは、もちろんホテルがあるわけではないので野宿をするのですが、自分で野鳥狩りをして、シチューを作ったり、魚を釣って食べたりしたとか。
 エドナもダルの舌には絶大なる信頼を寄せていますが、このダルの味覚はこうしたブッシュの経験から培われたのでしょう。
 そんなダル、エドナ夫妻が最近は緑茶を好み、金婚式には、家族を集めて日本料理屋でパーティをするようになって、私もちょっぴり嬉しいです。

 さて後日。
「エドナにケーキの焼き加減について文句を言ったときはびっくりした」とダルに言うと、「そんなこと言った?それはとってもまずい。すぐにエドナに謝らないと」と大慌て。急いでエドナに謝っていました。もちろんエドナは笑って許していました。でも、ダルと違って、その時のことはちゃんと覚えてましたヨ。
 今回の料理は、ダルお手製のミートパイです。最近は冷凍のパイ生地が売っていて、これを使えば比較的簡単にパイが作れるのですが、「Young housewife is lazy.」と嘆いていました。日頃から「料理は手間暇かけて」と言っているダルのミートパイは、もちろん生地もこだわりの自家製です。

■ミートパイ材料
(直径12cmのパイ皿8個分)

中身
A
・タマネギ…1個(みじん切り)
・にんにく…1片(みじん切り)
B
・牛ひき肉…500g
・ニンジン…1個(みじん切り)
C
・ドライマスタード…小さじ1
・トマトソース…1/3カップ
・ウスターソース…大さじ2
・スープ…2カップ(ビーフストック2個入り)
・玉子…1個
・オレガノ…小さじ1/2
(ミックスハーブでもOK)
・塩、こしょう…少々
・水溶き片栗粉…大さじ2

パイ生地(市販の物でもOK)
・小麦粉
 プレーン…1カップ(125g)
 セルフライジング…1カップ(125g)
(セルフライジングがなければ
 プレーンだけ250gでもOK)
・バター…125g
・冷水…100cc弱(生地を見ながら)

■作り方

中身

1.

フライパンにAの材料を入れ、よく炒める。

2.

Bの材料を加え、色づくまで炒める。

3.

Cを加え、沸騰したら弱火でしばらく煮る。よく冷ましておく。


パイ生地

1.

ボールに小麦粉、バター(サイコロ状に切ったもの)を入れ、指でポロポロになるまで、こすり合わせる。

2.

冷水をゆっくり注ぎ、手で軽くひとまとまりの生地にする。

3.

ボードに小麦粉をふり、生地を置き、こねながら、なめらかな生地に仕上げる。

4.

3mm位の厚さに生地を伸ばし、パイ皿の寸法に合わせてナイフで円形に切る。

5.

バターを塗ったパイ皿に生地をのせ、底にフォークで穴を開ける。

6.

生地に肉を入れ、ふちに卵黄を塗る。

7.

6の上に円形の生地をかぶせ、フォークでふちを押さえる。

8.

好みで上に飾りをのせ、黄身をはけで塗る。

9.

予熱したオーブン180度で、焼き色がつくまで15分位焼く。


■オージー流ミートパイの食べ方

1.

お皿にミートパイをのせ、マッシュピーを添え、ナイフとフォークでいただく。

2.

パイの真ん中に、トマトケチャップをぶすっと差込んでしぼり出す(回りに垂れなくて便利)。

3.

上の皮を先にとって、中のミートをつけなら食べる。



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