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趣味のお料理を通して、地元の人と交流し、オーストラリア家庭料理の深さに驚いた“のりさん”こと豊永典子さん。家庭の味とともにオーストラリア人のライフスタイルを紹介してもらいます。


その9 ブッシュキャンプ(焼きリンゴ Baked Apple)

「夜の静寂(しじま)のなんと饒舌なことか…」。
 ある年代以上の方々には、このセリフで始まるラジオ深夜番組(そう、「ジェットストリーム」です)にはなじみが深いのではないでしょうか。「静寂の饒舌」といわれても、当時中学生の私には反対語が並んでいるだけでよく意味が分からず、不思議な感じがしたものです。今回、ブッシュでの夜を体験して、この「饒舌」の意味がよくわかりました。

 オージー達と話していると、「キャンプ」という一言を聞くだけで話が止まらなくなります。あらゆる年代を通じてキャンプには特別な思い入れがあるようです。

「BBQもだけど、オージーライフの真髄はブッシュキャンプだよ」と言うGreg(グレッグ) & Arja(アリア)夫妻に誘われて、毎年恒例の本格的な家族キャンプにお邪魔させてもらいました。
 日本でもアウトドアがブームになり、オートキャンプ場やテント村でキャンプの経験をされた方も多いと思いますが、オージーのいう「ブッシュキャンプ」は全く性質の違ったもの。トイレもシャワーも、もちろん水道や電気も何もないところで過ごすキャンプです。

▲自慢のオージーブレックファースト

▲ロープの結び方を習う子供たち

▲初めてのライフルレッスン

 以前は、ブッシュであればどこででもキャンプができたようですが、今は国立公園内のキャンプも禁止になり、ケアンズ周辺でも、こういったキャンプができる場所が随分減ってきました。
 Greg達は知人が所有するキャトルステーション(肉牛の成育のために牛を放牧-放置?-しておく場所)の中でキャンプをしています。ゲートを開けてステーションの中に入ると、お隣さんは牛たちだけ。人間は30km先にしかいません。TV番組の「サバイバー」以上にサバイバルな生活です。

 到着して最初の仕事は、チェーンソーを持って薪の切り出しでした。ブッシュの中に入り、立ち枯れした適当な木を切り倒します。これから過ごす5日分の料理に使うたき火に、そしてそのたき火を囲むイスにもしますので、随分大きな木です。
 チェーンソーはお父さんの仕事。「チェーンソーなんて甘い!私たちの時代には、斧で切り倒したものよ」とは隣のおばあさんの弁。薪運びは子供たちの仕事です。

 Gregは子供達を「Servant(召使)ではない。報酬は払わないのだからSlave(奴隷)だ」と言ってコキつかます。それでも反発が起きないのは、キャンプでのお父さんが本当に輝いているから。お父さんがいないと、生きていけないのですもの。お父さんの毅然とした姿は、この後も度々見られました。

 薪を持ってテントにもどると、Arjaがすっかり食事の用意をして待っていました。
「さっきいた牛を一頭倒して肉を用意したわ」と、冗談交じりに言っていましたが、もちろん食料と飲み水は大量に用意して持っていきました。
 川のそばにキャンプしたので、川魚を使った料理も何度も頂きましたが、魚達は息子のBenが釣ってくれました。Benはウチの長男と同じYear 7ですが、キャンプに行くとまるで大きなお兄さんのよう。与えられた仕事だけではなく、自分からどんどん仕事を見つけます。壁を削って川に降りる階段まで作ってくれました。こういった仕事は父を師として、代々子供へ受け継がれていくのでしょう。

 きゃしゃですぐにでも折れてしまいそうな長女のKatrina(カトリーナ)も、たくましく力仕事をこなしていきます。女性用のテントは彼女が陣頭指揮をして組み立てました。彼女も小さいときから"slave"でしたから、キャンプ生活は得意です。

 キャンプでは、仕事に追われることもなく、時間がゆっくりと流れていきます。ある時は本を読み、ある時は皆でゲームをする。釣りをして収穫があれば皆に喜ばれる。
 Gregにはロープ結びの仕方や空気銃の撃ち方まで習いました。日が暮れると、照明はたき火と星明かりだけ。たき火を皆で囲んでいると、心が落ち着き、今日あったことを振り返る時間ができる。あとは皆自然に眠くなる。子守歌は、たまに聞こえる動物達の鳴き声と満天の星。何という贅沢な時間の過ごし方でしょう。Arjaは「どんな五つ星ホテルも、大地から星まで全部自分達のためだけにある、この場所にはかなわないわ」と言っていましたが、全くその通りだと思います。

▲火を囲んでのおしゃべり

▲焼きりんご

 もうひとつ、キャンプの話題でオージー達が盛り上がるのは、トイレのこと。私も興味半分、不安半分といった感じでキャンプでのトイレ事情を観察(実践?)してきました。
 言い方はいろいろあるようですが、大きい方をbig job小さい方をsmall jobと言います。今回はbig job 用にはちゃんとポータブルトイレを用意してくれていました。それでも、簡単な囲いはあるものの、お空の下でのトイレはなかなかウマくいかず、ウチの家族は皆見事に4日間の便秘になりました。
 small job はテントから少し離れた場所に、トイレットペーパーとシャベルがおいてあり、自分で掘った穴で用を足すとシャベルをその先に刺しておくという仕組み。4日目には、シャベルははるか彼方に刺さっていました。

 キャンプで過ごした5日間であらためて「家族の絆」を感じました。特に子供達にとっては、父親の強さ、たくましさを再認識する良い機会だと思います。存在が希薄になりつつある(?)ニッポンのお父さん、ブッシュキャンプで父性の復権を目指しましょう!

 さて、今回のお料理はキャンプ中にArjaに教わった「焼きりんご」です。キャンプでは、ダッチオーブンを使って、たき火の中で作りましたが、電子レンジを使っても簡単にできます。

焼きリンゴの 材料
A・青りんご…4こ
 ・レーズン…1/3カップ
 ・
ブラウンシュガー…1/4カップ
 ・ミックススパイス…少々

・バター…30g(小さく切る)

■作り方

1.

オーブンを180℃に予熱

2.

りんごの芯をくりぬく(apple corer)を使うと便利

3.

材料のAを混ぜ、スプーンでりんごに詰める

4.

オーブン皿にりんごとバターをおき、1カップの水を流し入れる

5.

180℃のオーブンで45分焼く(電子レンジで5〜6分)



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