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趣味のお料理を通して、地元の人と交流し、オーストラリア家庭料理の深さに驚いた“のりさん”こと豊永典子さん。家庭の味とともにオーストラリア人のライフスタイルを紹介してもらいます。


その15 キャトル・ステーション お料理:デイツプディング

「100%オージービーフだから安全」。
 日本のハンバーガー屋さんはBSE騒動からしばらくの間、これをうたい文句にしていました。
 私達にはなじみ深い「オージー」という言葉が、カタカナ語として通用するようになったのは「ビーフ」が大いに貢献してくれた、と言っても過言ではないでしょう。

 そのビーフ達、ケアンズ近郊ではアサートン高原でも姿を見ることができますが、主な生息地(?)は「キャトル・ステーション」と呼ばれる、内陸部のブッシュ地帯にある放牧場です。その想像もつかないような広大な土地で牛達の世話をしているのが、現代のブッシュマン、キャトル・ステーションのオーナー達なのです。


▲ここが、すべて自分の土地

▲焼き印を押すトラバー

 私と同い年の明るい女性ロクサン(Roxanne)とそのご主人トラバー(Trevor)は、ケアンズ・ノースのKewarra Beachに2エーカーの家を建て、娘3人と一緒に都会的な暮らしをしています。
 でも、この広大なエーカー・ハウスでさえ、彼らにとっては「狭すぎて物足りない」のだとか。それもそのはず、彼らはつい先日まで33万エーカーの土地に住んでいたのですから。


 ロクサンは、生まれも育ちもメルボルン。おしゃべりが大好きで、誰とでもすぐ仲良くなれる気さくな雰囲気を持つ女性です。
 そんな彼女がトラバーと出会ったのは、タイピストの仕事を辞め、オーストラリア全土を回る旅をしていたときのこと。内陸部の町クロイドンのパブで知り合った彼に運命的なものを感じ逆(?)プロポーズしました。
「私には6人の子供がいるのだけど、結婚してくれる?」
 もちろん本当は子供もいなければ結婚をしたこともありません。でも、実直な彼は、しばらくじっ〜と考えた末、"YES"と答えました。
 彼は、Yappar River 周辺に広大な土地を所有するキャトル・ステーションのオーナーでした。結婚式の当日、都会で育った彼女は「もうこれで、ショッピングともパーティーとも縁がなくなったわ」と自分に言い聞かせたそうです。


 新婚生活は、彼の両親から譲り受けた電気も電話も通じていない小さな家からスタートしました。家に少しずつ手を入れて住み易くしていく、というのは珍しいことではありません。でも二人の新居は特別なロケーションにありました。
 お隣は、車で飛ばして1時間。食料が調達できる店までは、やはり1時間半以上かかります。電気が通じたのが1年後、電話は1年半後にやっと使えるようになりました。

「おしゃべり好きな私が、よく耐えられたでしょう?」と今は笑って話してくれますが、毎日の仕事もかなりの重労働でした。牛の移動、焼き印押し、フェンスの補修などの仕事です。

 牛の移動というと、西部劇のカウボーイを思い浮かべますが、現代のカウボーイはヘリコプターとバイクで牛を追います。3千頭の牛をいちいち馬で追うわけにはいかないのです。
 もちろん、小規模な移動は馬を使いますが、都会育ちの彼女は馬に乗れません。
「キャトル・ステーションのオーナーが馬に乗れないなんて聞いたことがないよ!」とよく仲間から冷やかされたそうです。

▲野生動物は友達

▲未来のカウガール

 牛1頭1頭にキャトル・ステーションの名前と番号が入った焼き印を押すのも大変な仕事。年に1、2回 dry season に数人の労働者を雇って牛の移動や焼き印押しをしますが、自然に死んでしまう牛も多いので、正確な数を把握するのは至難の業だそうです。

 また、フェンスの補修も過酷な仕事です。30〜40kmの距離のフェンスを手で補修するのです。子供達が大きくなってからは、「ピクニックに行こう」と言って手伝ってもらったそうですが、子供達も「ピクニックに・・・」という言葉を聞くと、すぐに「行きたくない!」と返事をするようになったとか。

 仕事以外にも、色々な辛いことを経験しました。
 wet season (雨期)に雨が降り続いて大洪水が起き、3ヶ月間家に閉じこめられて、ヘリコプターに食料を運んでもらったこと、牛泥棒が入り込んできて数百頭もの牛を盗まれたこと。
 牛泥棒は、キャトル・ステーション同士での小規模なものもあり、「肉が食べたくなったら、隣に行け」という笑い話もあるとか。
 何か問題が起きても、警察が来るまでに何時間もかかる一種の無法地帯です。

 昔のことですが、近所で争いがあり、祖父の目の前で殺し合いがあったとも。
 折角作った配電盤を牛が食べてしまったり、敷地内の沼にクロコダイルが生息していて、愛犬を(人間も?)ねらうので撃ち殺したり、とロクサンから聞く話は、私の想像を超えたものばかり。


やはり楽しいことよりも、大変なことの方が多かったようですが、彼女は言います。

「キャトル・ステーションでは、"Time is my own(時間は自分のもの)."だったわ」

 そこは時間に追われる生活ではありません。7年間のキャトル・ステーションでの生活の間、一回も時計を見たことがなかったそうです。
 友達、親戚が訪ねて来ると仕事は1週間お休み、なんていうこともしばしば。休暇の許しをもらう必要はありません。

 また、家族の絆はより強いものとなりました。家族以外に周囲100km以内にいるのは牛と野生動物だけなのです。
 子供達は学校に行きません(行けません!)ので、こんな自由なことはありません。授業は全てラジオを使って行われます。あとはお母さんが先生代わり。今で言うホームスクールです。勉強が終わると、子供達は泥んこになって1日中遊んでいました。


▲デイツプディングの出来上がり

 トラバーとロクサンのキャトル・ステーション生活は、子供達の教育の問題や病気の問題から、7年後にピリオドを打つことになりました。今は2エーカーの家に住み、私にとってはとてもうらやましい生活を送っていますが、「ケアンズは常に時間を気にした、忙しい生活ね」というのが彼女の感想。

 ここが”忙しい”なら日本の生活はどう表現すればいいのでしょうか?彼女と話していると、人の価値観は過ごした環境によってこんなにも違ってくるものなのか、と感じてしまうのです。


今回はロクサンの大好物、デイツプディングを紹介します。

スッティキー・デイツプディングの材料
・デイツ(細かく刻む)…200g
・ソーダ…小さじ1
・水(沸騰させる)…150ml
・バター…125g
・ブラウンシュガー…125g
・卵…2個
・小麦粉(Self-raising)…125g

■バタースコッチソースの材料
・ブラウンシュガー…200g
・バター…50g
・クリーム…1カップ
・バニラエッセンス…小さじ1

■作り方

1.

ボールにデイツ、ソーダ、沸騰水を入れ20分おく

2.

違うボールにバター、砂糖をいれクリーム状になるまで、よく混ぜる

3.

2に卵を1個ずつ入れ、混ぜる

4.

3に小麦粉半量を入れなじませる

5.

4に残りの小麦粉、1を入れ混ぜる

6.

ケーキ型にバターを塗り、5を入れ、190度30分オーブンで焼く

7.

なべにソースの材料をいれ、沸騰させ、とろ火で数分間にる

8.

プディングにソースをたっぷりかけ、クリームをそえる



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