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趣味のお料理を通して、地元の人と交流し、オーストラリア家庭料理の深さに驚いた“のりさん”こと豊永典子さん。家庭の味とともにオーストラリア人のライフスタイルを紹介してもらいます。 |
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その20 パイオニア・スピリット お料理:アプリコット・チキン
『開拓者精神』というと、アメリカがイギリス植民地であった時代の『フロンティア・スピリット』を思い出す方が多いと思います。
同じくイギリス植民地であったオーストラリアでも、流刑地という特殊な生い立ちではあるものの、『開拓者精神』は『パイオニア・スピリット』として脈々と根付いており、オージーの会話の中でもしばしば聞かれる言葉です。
しかし、カウボーイがヘリコプターで牛を追うこの時代(その15・キャトル・ステーションを参照)に、真のパイオニア・スピリットはどこで発揮されているのでしょうか?
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▲12年間の汗の結晶
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ケアンズから車で1時間半ほどの『ミラミラ滝 (Millaa Millaa falls) 』の近くで、リタイア後の生活を楽しんでいるメロディス(Meredith)・トニー(Tony)夫妻は、自ら進んでパイオニア・スピリットを実践している夫婦です。
ミラミラ滝は、日本のガイドブックにも紹介されている有名な観光地で、アサートン高原のほぼ中心に位置しています。この辺りは、所々に町が点在しているものの、その他には滝や湖などの観光地と牛の放牧場があるだけの、自然がそのまま残っている地域です。
12年前、彼らが40歳代の時、トニーは軍隊に属し、その仕事は、戦後のオーストラリア各地に残された地雷や爆弾を調査し処理するという、危険を伴うものでした。
全国に60人ほどしかいないスペシャリストのひとりで、ひとつの特殊部隊がオーストラリア全土をカバーするので、現役の頃は2年ごとに異動を繰り返し、タスマニアを除く全ての州に住んだことがあるそうです。
20年以上もそんなストレスの多い仕事を続けるうち、どこか心が安まる場所に定住したい、と強く願うようになりました。そんな中、仕事で何度か訪れ、温暖な気候、豊富な水、自然に恵まれたこの地に強く惹かれ、ここでの生活を夢見るようになりました。
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▲建築中の自宅
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もちろんメロディスも大賛成。そして、定住のために購入した土地は21エーカーのジャングルでした。もちろん、電気、水道などはありません。これまで何も使われたことのない土地なので、そこにたどり着くだけでも大変です。
最初は、軍のヘリコプターで生活物資を落としてもらうしか行きようのないほどの未開の地でした。四駆でも道無き道を3km以上進まなければなりません。子供も独立して家を離れ、肉体的にもまだ大丈夫。
なんとか自分達の力で人が住める環境にし、家を立ててみたい。両親、子供たち、友人達が「とても無理」と口をそろえる中、この困難な目標を立てた二人のチャレンジが始まりました。
1年目は自分の土地にキャラバン(キャンピングカー)を置いて住居としました。大きな岩をどかし、木を切り落とし、ドラム缶製のトイレを設置する。川からポンプで水を引き、電気を引くための電柱の穴掘りと、まずは人間が最低限生活できるような環境にすることから始めました。
敷地内に川が流れているので、食器洗い、洗濯、お風呂もすべてそこで済ませました。夕方シャワー代わりに、川に飛び込むと(もちろん2人とも裸で。誰にも見られる心配はありませんから)、震え上がるほど水が冷たかったのを今でも覚えているそうです。
「川で洗濯する時は石を使ったんだよ」、と冗談で話していましたが、彼らの話を聞いていると、それも本当と思えるほど、まるで原始時代のような生活です。でも、ほんの12年前のこと、日本ではバブル真っ盛りの頃のことなのです。
その5年後に自分達の家が完成するまでは、シェード(少し大きめの物置のような建物)を作り、そこで生活しました。物置ですから屋根裏がそのまま天井になっています。
ある日目が覚めると、頭上でヘビがネズミを追い掛け回していて、「顔に落ちてきたらどうしよう!」と怖くなってマットを移動したこともあったそうです。
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▲パイオニア精神あふれる二人
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家の建築にあたって、基礎だけは専門家に頼みましたが、その以外は全て2人だけで力を合わせ完成させました。設計図を描き材料を買い組み立てる。結局うまくいかず、また最初からやり直す。その繰り返し。
しかし、むしろその失敗を経験と考え楽しんでいた、とも。たとえ見栄えが悪くても、自分達だけの手で作り上げた、ということに大きな意味があり、それがプライドになっている、と話してくれました。
トニーは、身体も頑強で大男ですから、肉体労働にそれほどの苦労は無かったと思いますが、むしろ繊細な都会人に見えるメロディスの仕事ぶりには、脱帽してしまいます。その活躍は、トニーに勝るとも劣りません。
もともと外の仕事が大好きで苦にならない、というたくましさを持っていますが、家の周りに砂利を引く仕事も、リアカーに重い砂利を載せカーポートからずっと離れた庭まで100回以上往復したり、広大な土地の芝刈りを、1日8時間2週間かけて全てひとりで彼女がやったり、と、このメロディスのどこにそんなパワーがあるのか、と思ってしまうほどの仕事をこなしています。
「私の友達は、『そんなのとてもできないわ』って言うけど、それこそ、パイオニアスピリットよ」、とその発言は自信に満ちています。
トニーは、「とにかく、なんでも自分でよく考えた上、やってみること。"Have a go!(やってみなよ)"、これが大事さ。もっとも、これまでやってきたことをもう一度やろうとは思わないけどネ」、と話してくれました。
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▲トニーの作品が並ぶギフト・ショップ
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今でも、たまに軍の仕事を引き受け、何日か家をあけることがありますが、自宅に戻ると、「自然に囲まれ、誰にも邪魔されない自分だけの世界は本当に心も身体も癒されるよ」、とも。
彼のもうひとつの才能である、この自然の中で描いた、動物、植物をモチーフにした作品は、近くのCrafts & Souvenirs のお店に並んでいます。この大自然に囲まれたすばらしい環境が彼の感性を磨き、芸術を生み出している、といえるでしょう。
すてきな家も完成し、過去の苦労が思い出となった現在の彼らの生活の中で、今でも解決の糸口が見えない問題は、「野生動物との戦い」だそうです。
動物達は彼らが住み始める前からそこにいたわけですから、もちろん追い出すことは出来ません。特にスクラップ・ターキー、ツリー・カンガルー、ラット、ワイルドキャット、ワイルド・ボア(いのしし)などは、油断するとすぐにやってきて、彼らが手塩にかけて育てた、くだもの、野菜、植物などを食い荒してしまう、招からざる客達です。
先日は、一生懸命育てたパイナップルが、ちょうど熟れて食べごろになり、収穫をしてみると、裏側からターキーが綺麗に皮だけ残して食べ終わった後だった。その後も、同じ轍を踏まないようにと、上からバケツや袋をかぶせて防ごうとしたら、今度はネズミが穴を掘って下から食べてしまったとか。
そう言いながらメロディスは、「野生動物は本当に頭が良いわ」と感心していました。こういったことは日常茶飯事なので、いかに野生動物と共存していくか、がここで生活していく上での大きな課題だそうです。
彼らのご自慢の大きなデッキに座っていると、聞こえてくるのは、川のせせらぎの音と、鳥の声だけ。広大な敷地で目の前をさえぎるものは何もありません。目に入ってくるのは生い茂った青空と熱帯雨林のみ。人里離れているので訪れる人もほとんどありません。
「人恋しくなることはない?」と聞いてみると、「そうね、友達と会って気軽にお茶することが出来ないのはちょっと寂しいけど、車で1時間半走らせればケアンズにも行けるし、私は自然をひとりじめしている気分を味わえるここが最高だわ」、とのことでした。
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▲アプリコット・チキンの出来上がり
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外で1日中仕事をしていても「全然飽きない」というトニーとメロディスでも、21エーカーの土地をパーフェクトにするには一生かかっても終わらないでしょう。だからこそ、その広大な土地を終の棲家に選んだという、彼らたち。彼らのパイオニア・スピリットはずっとこの先も続いていくのだ、と思いました。
今回はお昼にご馳走になった、アプリコット・チキンをご紹介します。チキンのうまみとアプリコットの甘みがマッチして育ち盛りの子供たちにも大好評でした。
| アプリコット・チキン(Apricot Chicken) |
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■ 材料
・とりもも肉…4枚(食べやすい大きさに切る)
・玉ねぎ…2こ(薄切り)
・アプリコット缶…1缶(410g)
・フレンチオニオンスープ…1袋
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■作り方
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1.
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鶏肉を切り、キツネ色になるまで炒め、なべから取り出す
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2.
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玉ねぎを炒め、1を入れる
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3.
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アプリコット缶とフレンチオニオンスープを加え、1時間くらい弱火で煮込む
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