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趣味のお料理を通して、地元の人と交流し、オーストラリア家庭料理の深さに驚いた“のりさん”こと豊永典子さん。家庭の味とともにオーストラリア人のライフスタイルを紹介してもらいます。


その23 オージーの漁師さん
●お料理:バーベキュー・プロウン


 ケアンズを訪れる観光客のお目当てのひとつは美味しいレストラン。なかでも海のイメージが強いこの地には、エスプラネードを中心にシーフードレストランが軒を連ねています。よく冷えた白ワインを片手に、氷の上に盛られた生牡蠣やエビ、バグなどをいただくのは、最高の贅沢気分です。

 タイガー、キング、バナナ(プロウン)などの種類があるオーストラリア産のプロウン(エビ)は世界的にも有名で、サイズも大きく色鮮やかで甘みもあります。先日行われたデンマーク王室の結婚式では、オーストラリア出身の皇太子妃メアリーのために、当地自慢のプローンが献上され出席者達が舌鼓を打ったという報道が紙面を飾りました。

 でも…ケアンズで実際にエビの収穫はあるのでしょうか?日本の漁港のように海沿いの魚市場なんて見たことないし…。



▲マークの船 DRIGTER号

 友人のガイリーン(Gaelene)のご主人マーク(Mark)は漁師さん。エビ漁のシーズンとなる3月から12月の間は自慢の漁船 DRIFTER号で出漁します。

 この時期には長い時で2〜3ヶ月家をあけ、船上で暮らすのです。ガイリーンや3人の息子たちとも電話でしか連絡がとれませんが、自ら選んだ漁師という仕事に誇りを持ち、また家族もそんなマークを尊敬しているので苦になりません。

 マークは海軍で働いていた父親に、幼い頃から釣りを教わり一緒に船で海に出ていました。その父が若くして亡くなり、マークは家計を助けるため12歳からケアンズで船での仕事を始めました。

 最初は観光船のクルーとして、その後は漁師として、海で生きてきました。ガイリーンと結婚した後、一緒に3年間ほどアデレードでコーヒーショップを経営しましたが、やはり小さい頃から慣れ親しんだ海、魚がなつかしく、彼女を説得してまたケアンズに戻り、以来エビ漁を続けています。

 エビ漁は5つの網と探知機を使いますが、もちろん養殖ではなく天然ものなので、探知機があるといえどもその漁場は長年の知識と鋭い感で探し出します。

 漁獲量は月齢との関係が非常に深いとのこと。
 例えばタイガープロウンの場合、満月の時は明る過ぎてエビは泥中に深く潜り上がってこないので、漁はできません。逆に新月で真っ暗な夜は漁には最高の時期です。

 この時は夜の6時位から朝8時頃まで、ここぞと思った場所を探しては網を落とし2〜3時間して引き上げる、という作業を繰り返します。たいてい5〜6泊は同じ地域でいいスポットを探し続け、次にまた離れた場所に移動。もちろん、満月の前後に収穫が多くなる漁場もあるので、その場所を見極めるのが腕の見せ所なわけです。



▲エビと魚をより分別するマーク


 天然もののエビは味も素晴らしく、オーストラリア特産として日本などに高値で卸され、地元の人々の口にはなかなか入らないほどの人気なのですが、それでもマークの悩みは尽きません。

 ひとつは卸値の問題。東南アジア産、地中海産などの安価なエビが出回り始め、卸値がグッと下がりました。追い討ちをかけるようにガソリンの急騰。例えば7年前は1キロ当たり30ドル以上で取引されていたエビが今では18ドルに下がり、加えてガソリン代は2倍に跳ね上がっていますから、漁師達にはたまったものではありません。

 彼の船の場合、出漁すると一日に530リットルのガソリンが必要なので、一晩で300〜400kgの収穫があるときには十分利益が出ます。でも悪い日は50kg以下。そうなるとガソリン代のほうが高くなってしまい、早々に港に引き返すしかないわけです。

 また政府の規制も強く、1つの船に7人の監視官が乗っていると言われるほどたくさんの制限があります。たとえば、網で引き上げた魚は自分が船で食べる分を除いては、すべて海に返さなければいけません。彼の免許では、エビ、バグ、ほたて、蟹、イカ以外は捕ってはいけないのです。たとえ高価な魚が網にかかっても、手作業で選別してすべて海に投げ捨てます。

 こういった規制は他の国に比べるとかなり厳格だとのこと。そのため、漁業は以前と比べるとかなり厳しい状況となり、かつてクイーンズランドに登録されていた1000隻近くの漁船も今では300隻にまで落ち込んでしまったそうです。



▲家族と一緒に


 彼が「ボクの手を見てごらん」と私の目の前に手を差し出しました。手のひらはささくれ、ガサガサです。「まるでサンドペーパーみたいだろう?」と彼。知り合った人と握手をすると「どうしたの?その手」と必ず聞かれます。そのたびに"the work for living(生活のため)"と答えているんだ、と。奥さんや子供に触れる時も、手のひらではなく手の甲を使うとか。彼の仕事がいかに過酷なものなのかがわかります。

 また、怖い思いも何度となく経験しました。「これで俺の人生も終わりか!」と思ったこともあったとか。海に潜って船の修理中にサメに襲われそうになったり、ケーブルが切れたため船が直進できなくなって海を旋回したり、網のチェック時に誤って海に落ちたが一緒にいた乗員がそのことに気づかず3時間近く漂流した、など苦労話は絶えません。

 彼は笑い話として話してくれるのですが、奥さんであるガイリーンはそういった状況を聞くたびに凍りついてしまうそうです。

 もちろん海での仕事はつらいことばかりなわけではなく、楽しいこともたくさんあります。エビを捕った後、エビ以外の魚を投げ捨てるので、イルカがいつもそれを目当てに船の回りに集まってきます(時にはサメのことも!)。

 彼が海に飛び込むと、イルカは肩に乗ってきたり一緒に泳いだり遊んだり。海の上で大の字になって、イルカと一緒に何も考えずにプカプカ浮かんで過ごすと、まるで天国にいるような気分になるとか。

 先日は鯨の親子がやってきたので、エンジンを止めデッキブラシで子供の鯨の鼻をこすって遊びました。最高にワクワクして楽しかったそうです。観光客が何千ドルも払ってやっていることでも彼にとっては日常のことなのでとても幸せだと思うし、海は自分のバックヤードみたいなものだと思う、とも。



 彼がまだ船で下働きをしていた頃、海のこと、船のこと、魚のことなどを教えてくれたキャプテンが、つい最近亡くなりました。遺書の中には、彼に「自分の遺灰を海に流して欲しい」との希望が書かれてありました。近々それを実行にするために海に出るそうです。

 ガイリーンには「ボクの時もぜひそうして欲しい」と頼んでいるのですが、彼女はなかなか「ウン」とは言ってくれません。「せめて半分だけ海に流すのはだめなの?」と私が聞くと「そんなのダメさ。海の男は身体ごと海に帰らなきゃね 」と。さすが海の男は発言も魅力的。

 彼の下で7週間 deck hand(助手)を努めた日本人の男の子が教えてくれました。「(マークは)出会ったオージーの中でぶっちぎりに1番の男です」と。



 今回は、エビを使ったお得意料理を教えてもらいました。ガイリーンに「マークが捕ってきたエビと輸入エビや養殖エビとの味の違いは?」と聞いてみると、「お店で買ったエビは食べたことがないので分からないわ」との答えが返ってきました。ウラヤマシイ…。



▲バーベキュー・プロウンの出来上がり



▲タイガー・プロウンの大きさにビックリ!


バーベキュー・プロウン

材料
 パセリ1/4カップ/オイル1/4カップ/バーベキューソース大さじ3/レモンジュース大さじ2/蜂蜜大さじ1/ガーリック2片(みじん切り)
エビ1kg

■作り方

1.

エビは殻を取り、背わたを抜く

2.

Aの材料をボールに入れミックスし、エビを加えて混ぜ合わせる

3.

冷蔵庫で4時間〜一晩寝かせる

4.

180度に熱したオーブンで3分間。途中1度ひっくり返す



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