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趣味のお料理を通して、地元の人と交流し、オーストラリア家庭料理の深さに驚いた“のりさん”こと豊永典子さん。家庭の味とともにオーストラリア人のライフスタイルを紹介してもらいます。


その26 馬と共に歩む日々 ●お料理:ラズベリー・ココナッツ・スライス

皆さんは「馬車」に乗ったことはありますか?ロマンティックな(!)私は馬車といえばお姫様、そうシンデレラを思い出します。阿蘇山や大島には、太った馬に牽かれた箱のような観光馬車が走っていますが、私の中の「馬車」はそれとはまったく違うもの。スマートな白馬に牽かれ華奢な車輪のついたお姫様用の馬車なのです。そんなすてきな馬車に先日乗せてもらいました。そしてエスペラナードの海沿いを走ったのです。


▲シンデレラと王子様?

「今から馬車を走らせるけど、見に来る?」友人のDeb(デブ)から突然電話が入りました。彼女から、ケアンズで結婚式を挙げた新郎新婦を乗せて通りをパレードする仕事をしている、と聞いたとき、「次の仕事の時には是非連絡して欲しい」と頼んでおいたのです。教えてもらった場所に行きしばらく待っていると、白馬の牽く幸せそうな若いカップルを乗せた白い馬車が、目の前に現れました。この時の感動は忘れられません。シンデレラと王子様が突然絵本から飛び出してきたような驚きでした。


デブの白い馬車は彼女自身の持ち物です。結婚式場や観光会社の所有ではありません。馬が大好きな彼女の小さい頃からの夢、「いつか大人になったら、おとぎ話に出てくるような真っ白な馬車と馬を持ちたい」そんな夢を実現させたのです。馬車だけでなく美しい白馬も彼女個人の愛する飼い馬の中の一頭です。実は彼女はアサートン高原に24頭もの馬を飼う牧場主なのです。

デブの馬との最初の出会いは8歳のとき。両親から念願のポニーを買ってもらいました。それからはいつもポニーと一緒。乗馬の技術も最初の基礎こそ近所の人から教わりましたが、ほとんど独学。学校から帰ると毎日ポニーと過ごし、少しずつ腕を上げていきました。「乗馬技術の上達には指導者がいないと難しいのでは?」と聞くと「自分がやりたいと強く願えば、苦労はしても必ずものにできるものよ」と。12歳になると弟と一緒に大人に混じってポロ・クロス(POLO CROSS−2チームに別れ馬上からネットつきのラケットでボールをゴールに入れるゲーム。英国の「ポロ」と似ているがラケットが異なる)のチームに入り、試合のたびに馬を連れて国内を遠征して回りました。

勇猛果敢なデブの姿

大学生になり、アルバイトができるようになると、周りの友達が洋服や車などにお金を費やしているのを尻目に、彼女は懸命にお金を貯め、21歳で馬を、そして25歳でついに馬車を手に入れました。彼女のブリーダー暦は10年になりますが、それでも「馬は趣味」と言い切ります。でもいつも馬と一緒の生活。朝起きると、もちろん馬の世話から1日が始まります。母親を失った生後2ヶ月半の子馬のミルクやりから、馬蹄の手入れ、歯の掃除など。馬は生きているだけに気も抜けません。馬に純粋な愛情を注ぐデブだからこその生活です。アサートン高原にある彼女の牧場は、200エーカーの馬用の運動場と2000エーカーの牧草用地から構成されていますが、デブに飼われている馬たちは本当に幸せだと思います。

以前あの「タイタニック」で「資産家キャル」として好演した男優ビリー・ゼインから、彼女の馬を映画の撮影で使いたい、と申し出がありました。アメリカからわざわざ彼女の牧場に馬を見に来たのですが、話を聞いてみると、飛行機から馬に飛び乗るシーンで使いたい、とのこと。それを聞いたデブは、「馬が万が一怪我でもしたら」と、その申し出をさっさと断ってしまったそうです。もちろん馬たちの餌代や広大な牧場を維持していくためには莫大な費用がかかりますが、本来の仕事である学校の美術教師と、学校が休みのときエスペラナードで馬車を出し観光客を乗せて行う町の案内、そして月2回の週末に行うウェディングの馬車の仕事をこなしながら、その費用を稼いでいます。



▲競技用馬車

▲ココナッツスライスの出来上がり

当然デブの馬術の腕は折り紙つきです。自宅には様々な競技会で得た優勝トロフィーがあふれています。なかでも馬車を牽く競技の手綱さばきはピカ一で、手綱を片方だけの手で持ち馬車をコントロールするというイギリス式の正式な馬車牽きが出来る騎手はクイーンズランドでは彼女だけなため、毎回競技会では優勝しているそうです。馬車と馬を操る際、両手で手綱を持てばラクなのですが、片手にムチ、片手に手綱を持つという技術はかなり難しいとのこと。実はこの技術は、片方にラケットを握り片方は手綱を持つポロ・クロスをやっていたことから習得できた技術だそうで、そこにも彼女がいかにいろいろな方面から馬のことを学び、常に熱心に馬と関わってきたかが分かります。



今は高校生になる娘さんも3頭の馬を持ち、デブ同様に馬と共に生きる日々を送っています。「大きくなったら○○を持ちたい!」という誰もが小さい頃夢見ることを、デブはちゃんと実現させたのです。夢が夢で終わらないことを教えてくれた彼女の生き方は、彼女の生徒達、娘さん、そして私にも夢を与えてくれました。


今回はココナッツをたっぷり使ったスライスを紹介します。学校で開かれるバザーやマーケットにもよく並ぶ、なつかしいお菓子です。お好みのジャムを載せて是非作ってみてください。


ラズベリー・ココナッツ・スライス(Raspberry Coconut Slice)

材料
A
バター…60g
砂糖…1/4カップ
卵…1個
小麦粉(self-raising)…1+1/4カップ
バニラエッセンス…適量

B ボールに以下を混ぜたもの。トッピング用
ココナッツ…1カップ
砂糖…3/4カップ
卵…1個
ラズベリージャム…適量

■作り方

1.

バターに砂糖を入れクリーム状になるまでよく混ぜる。

2.

卵とバニラエッセンスを加え混ぜる。

3.

小麦粉を入れ、手で混ぜ合わせてひとかたまりにする。

4.

バターを塗った28x18cmの台に3を入れ生地を伸ばす。

5.

ジャムを生地にぬりBを全体にかける。

6.

焼き色がつくまで180度のオーブンで20分焼き、冷めた所で四角に切り分ける。



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