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趣味のお料理を通して、地元の人と交流し、オーストラリア家庭料理の深さに驚いた“のりさん”こと豊永典子さん。家庭の味とともにオーストラリア人のライフスタイルを紹介してもらいます。


その27 新天地を求めて ●お料理:チキン・ブリヤニ

ニューヨーク 9.11以降、「文明の衝突(ハンチントン)」と言われる、特に西欧(キリスト教)文明とイスラム文明の対立を原因とした事件が新聞の紙面を賑わしています。オーストラリアでも、多くの国民が犠牲になったバリ島爆破事件、レバノン移民との対立事件など、悲しい出来事が起こるようになってきました。日本に暮らしているとイスラム教徒と接する機会も少なく、どうしても他人事のような気がしてしまいますが、ここオーストラリアでは、私達と同じように新天地を、そして自由な豊かさを求めて、イスラム教圏出身の多くの移民達が暮らしているのです。

▲2人の結婚式


息子の友人のお母様として知り合ったRiffit(リファット)は、パキスタン出身のイスラム教徒です。家族は元々現インドに属する地域の出身でしたが、宗教上の理由でパキスタンが分離独立した後、イスラム教国家パキスタンに移住しました。といってもそれは彼女が生まれる前のこと。リファットは家族の中で、初めてのパキスタン生まれとなったのです。

もともと敬虔なイスラム教徒で信仰も厚い彼女は、母国での生活に特別な不満があったわけではありません。しかしパキスタンは、政治が不安定で貧富の差が激しく、自分達の先行きに関して常に不安を感じていました。特に、結婚して子供が生まれ、子供達の将来について夫婦で真剣に考えるようになると、その不安は増大していきました。そして家族で相談した上、まず最初に新天地南アフリカに移住することを決心したのです。


▲一族の女性・子ども達

医師であるご主人は、その専門性からコモンウェルズ(英連邦)内でのビザは比較的簡単に取得できます。最初に住んだ南アフリカの都市ダーバンには、イスラム教徒の大きなコロニーがあって、その中には立派なモスク(礼拝堂)もあり、異国といえども孤独を感じることはほとんどありませんでした。パキスタン時代と比べると生活は豊かになり、子供の教育にもある程度満足していました。しかし、思った以上に治安が悪く、常に緊張を強いられました。家は地域の中でも安全といわれる場所にありましたが、家の全てのドア・窓を常にしっかりとロックし、外出や就寝時には安全装置を必ずオンにするという生活。ご主人の仕事場(病院)までは歩いて2,3分なのに、常に銃での襲撃に備えなければならない。子供達も外で遊ぶことはできず、車を運転するときには安全な地域に入るまで、決して止まってはいけない、等々。南アフリカでの生活は11年にも及びましたが、いつも危険を意識しなければいけない生活は最初に望んでいたものとは遙かに隔たりがありました。そしてより安全なカナダ、オーストラリアへの移住を希望し、その結果ビザの許可が早く下りたオーストラリアに暮らすことになったのです。

彼女から聞くイスラム教徒の生活は、驚くことばかりです。イスラム教徒は豚肉を食べることを禁じられていますが、その他の獣肉もイスラム式に屠殺されたものでなければ食べてはいけません。これはハラールフードと呼ばれ、南アフリカのコロニーでは、マクドナルドやケンタッキーにもハラールミートを使ったハンバーガーが売られていました。でも、オーストラリアではそのことを理解している肉屋は数少なく、探すのが大変なほど。来豪直後はハラールミートを扱う肉屋を見つけられず、3ヶ月もの間肉類を食べることができませんでした。

▲南アフリカでのひととき


また、家族のあり方も違います。特に感銘を受けたのは、彼女のご主人に対する思い、接し方です。日本人や欧米社会に暮らす女性には賛否両論だと思いますが、一口に言うと昔の日本女性のようです。ご主人は家長であり外で大変な苦労をしている。だから家の中のこと、家事一切は妻である自分の仕事。夫に手伝ってもらうなどとんでもない。また夫の家族を自分の家族以上に大事にすることは当然であり、結婚をすると夫の両親、兄、弟の家族と一緒に大きな家族として助け合って暮らすことが一般的。自分の両親は、自分の兄、弟が同じように面倒を見るので問題はない。特に義母を敬い、義母に尽くすことは夫への愛情につながる、と。ご主人への強い愛情を感じさせます。そういう彼女に、教義上許されている一夫多妻制に関して聞いてみました。「ご主人が奥さん達を経済的にも愛情面でも、全てイコールに扱えるという条件の下でなら許されるわ」とのこと。実際には、彼女の周囲にもあまり例はないようです。最初の奥さんとの間に子供ができなかった弟だけが2人目の奥さんをもらった、とのことでした。「自分の子供、家族のことを何よりも優先するのが女性達の一番の勤めなのよ。」 イスラムの女性の生き方に全面的に賛成するわけではないのですが、大学で生物学を専攻したインテリな彼女がそう熱く語ると「そういうものか」と納得してしまうのも事実です。


オーストラリアでの暮らしは8年になります。安全性や豊かさ、子供の教育の面など、本当に満足して生活しています。しかし、そんな彼女にとって「今はとても苦しい時期だ」とのことです。敬虔なイスラム教徒である彼女は、当初ベールをかぶりそれと分かる服を着ていました。しかしアメリカでのテロ事件をきっかけにオーストラリアでも周囲の目が厳しくなり、買い物をしていても「あなたはどこの国からきたの?イスラム教徒なら言いたいことがあるのだが・・・」と呼び止められることも一度二度ではなくなりました。その他様々な嫌がらせを受け、いたたまれなくなった彼女は、イスラム教徒とわかる服を着ての外出をしなくなり、また自然と学校行事や社交の場に出ることを控えるようになりました。彼女の息子も同様で、私の息子に「君は日本人だから言うけど、ボクがイスラム教だということを他のオージーの友達には絶対内緒にしておいてね」、と苦しい胸のうちを話したそうです。彼女もそれが辛く、「子供達がイスラム教徒であることを隠し、誇りに思えないことがとても辛く悲しい。私達はテロリストではないのに・・・」と寂しそうに話してくれました。

▲オーストラリアでの自宅にて

▲食欲をそそるチキン・ブリヤニの出来上がり

彼女と話していると、「私達の国では・・・、文化では・・・、宗教では・・・」という言葉が繰り返し出てきます。その言葉を聞く度に、彼女の強い信念を感じずにはいられません。しかし異国の地であっても、イスラム教徒としての生活習慣、考え方を貫こうとするその態度が、移民先の国々で現地の人々から強く批判されているのも確かです。逆に、彼女からは、「日本はアジアのリーダー的存在であり、力を持った国なのに、どうして自分の国、文化に誇りをもたず、西欧社会にばかり媚を売るの?」と聞かれました。平和な日本に育ち、他民族との紛争や貧困などの問題に悩むことなく生きてきた私には、彼女の疑問に対する明確な返答はできませんでした。しかしだからこそ、オーストラリアで出会うことのできる、様々なバックグランドを持つ人々との貴重な出会いを大事にし、彼らの言葉に耳を傾けたいと思うのです。

今日はパキスタンなどイスラム教圏の代表的料理チキン・ブリヤニをご紹介します。日本のお赤飯のように、元々はお祝いの席のために作られるそうですが、今では気軽に家庭の食卓にのぼるそうです。

チキン・ブリヤニ(Chicken Biryani)

材料
チキンブリヤニスパイス(Shan社)…1/2箱
鶏もも肉…500g(キューブ大に切る)
玉ねぎ…2個(薄切り)
トマト…4個(1口大)
ししとう…5個(乱切り)
ヨーグルト…1カップ
ニンニク…2片
しょうが…少々
インディカ米…500g(30分水に浸す)

■作り方

1.

玉ねぎ、鶏肉をよく炒め、トマト、ししとうを加える。

2.

ヨーグルト、にんにく、しょうが、ブリヤニスパイスを入れ、水1カップ半を注ぎ10分煮る。

3.

米を入れ蓋をし、材料がやわらかくなるまで煮る。



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