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趣味のお料理を通して、地元の人と交流し、オーストラリア家庭料理の深さに驚いた“のりさん”こと豊永典子さん。家庭の味とともにオーストラリア人のライフスタイルを紹介してもらいます。


その28 クリスチャンのクリスマス ●お料理:ショートブレッド

経済の悪化によるものか、はたまた高齢化のためか、日本のクリスマス・シーズンには一時の勢いがなくなってしまったようです。新興住宅地に行けば、どこでも見ることのできた派手な電飾の飾りは影をひそめ、毎年のようにビッグヒットしたクリスマスソングも、この頃は皆小粒になってきました。元気があるのは銀座のティファニーに並ぶ若いカップル達くらいでしょうか?

▲友人を招いてのクリスマスランチ(エズマ)

そんな勢いのなくなった日本に比べ、最近上昇気流に乗っているオーストラリアのクリスマスは、元気いっぱいです。サーフボードに乗りやってくるサンタクロースに引き連れられ、若年人口が急激に増加しているケアンズのクリスマスは、ますます派手になってきています。皆さんはスミスフィールドのクリスマス飾りをごらんになりましたか。明るく輝く様々な飾り付けを見ていると、真夏のクリスマスもなかなか良いものだと思えてきます。

そんなきらびやかなクリスマスのお祝いもある一方で、キリスト教が一般的なオーストラリアでは、相変わらず敬虔なクリスチャン達が毎年恒例のクリスマスを過ごしています。前回(2002年11,12月号「その4 クリスマス料理」)は一般?のオージー達のクリスマスを紹介しました。今回はクリスチャン達の正当?なクリスマスの過ごし方をお伝えしましょう。

夫婦ともに熱心なキリスト教徒であるマル&エズマ夫妻は、クリスマス・イブ(24日)の夕方になると、所属する教会のイブ礼拝に参加します。礼拝では、信者の子供達が、マリア、ヨセフ、博士、天使、羊飼いなどに扮し降誕劇を演じます。ふたりはもともと学校の教師をしているので、この劇の指導は主として彼らの役割。クリスマスが近づくと日曜日の教会礼拝のたびに劇の練習です。毎年繰り返される題目ですが、役者達(子供)は毎回初めてのことなので、何度も練習が必要です。もともとオージーの子供達は小さい頃からこうした劇や歌に参加する機会が多く、その分鍛えられている?ので、小さい子でも、セリフを言えない子供はほとんどいません。どちらかというと得意げで、皆うれしそうに舞台に上がります。それでもセリフを忘れてしまった場合には、舞台の袖から、エズマがそっと教えます。無事に劇が終わると、子供達にはプレゼントが。こうして、子供達にはクリスマス・イブの忘れられない思い出ができるのです。

▲家族で楽しむクリスマス(デビー)

イブの礼拝の後は、ひとり一品持ち寄ったお料理やお菓子を教会のメンバーと頂き、遅くまでおしゃべりを楽しみます。明日のクリスマス(25日)には、また大事な教会でのクリスマス礼拝があり、その後に家族で過ごすクリスマス・ランチが控えています。私が「明日のクリスマスランチの準備は大丈夫?何か持っていきましょうか?」とエズマに尋ねると、「まだ何も考えてないの。でもいつものことだから何とかなるわ」と頼もしい答えが返ってきました。

家に帰ると、家族全員そろっての夕食。普段はそれぞれ独立して住んでいる娘達もこのときばかりは遠方からやってきて水入らずでのお祝いです。夕食の後、明日のクリスマス・ランチの支度を皆でします。クリスマスランチは家族でお祝いするのが一般的ですが、様々な理由で家族でお祝いできない人達もいます。朝のクリスマス礼拝後、そんな友人達をいつも家に招待して毎年一緒にクリスマスランチを囲むのが習慣になっているのです。クリスマス・プディング、ロースト・ビーフ、フルーツ・サラダなど、家族の中でそれぞれの担当が決まっているそうですが、種類も量もとても多いので大仕事です。娘さん達に「毎年たくさんの人を招待するのは大変でしょ?両親に文句を言った事はない?」と質問すると、「両親が教師で、また熱心なクリスチャンだから、家にはいつも友達や学校の関係者、教会の人達が遊びに来るの。小さい頃からそうだったから慣れているし、楽しいわ」とのことでした。今回は私もお邪魔しましたが、ここはどこ?と思うくらい様々な国の人達でいっぱいのクリスマス・ランチでした。



もう一人の友達デビーも、熱心なクリスチャンです。毎年クリスマスの朝には早起きして、前々から準備してあったショートブレッド、アプリコット・ボール、ラム・ボールなどのクリスマスのお菓子をかごに詰め、前日に作ったグレービー・ソースをかけた七面鳥もきれいに大皿に盛って、ボーイズ・ホーム、ガールズ・ホームに届けます。ここはいわゆるホームレスの子供達(12歳から18歳位まで)が暮らす施設で、親がアルコール・ドラッグ中毒だとか、家庭内暴力などで、家庭でのまともな生活が送れない子供達が保護されています。オーストラリアに住んではいても、クリスマスの意味さえ知らないという子供がほとんどだそうです。そんな子供達に少しでもクリスマス気分を味わってもらおうと手作りのクリスマスのお菓子、料理を毎年届けているのです。「本当はもっともっとしてあげたいのだけれど、なかなか出来なくて」と言うデビーはマリア様のようです。

▲華やかなテーブルセッティング

▲ショートブレッドの出来上がり

クリスマス・ランチには、彼女のお母様、2人の姉夫婦、そしてご主人のお兄さんを毎年招待してお祝いします。私が、「末っ子のあなたがなぜみんなを招待するの?」と聞いたところ、答えはいたってシンプル。「私はお料理好きだけど、姉達はお料理が嫌いなの。母はあと何年生きるかわからないから、母が生きているうちは大変だけどうちで頑張るわ」と。そんな頑張り屋のデビーの姿を見て、ご主人のジョージや3人の息子達は、ケーキを焼いたり、サラダやロースト・ビーフを作ってくれたりと、とても協力的です。彼女のクリスマス・ランチのテーブル・セッティングは美しくため息が出るほど。家族のためにこんなにも頑張れる彼女には頭が下がります。そして、夜は、友人達を招いてのクリスマス・ディナー。と言っても、たいていはクリスマス・ランチの残り物が食卓を飾るそうです。

日本ではクリスマスというと、恋人と過ごすロマンチックなイブや、クリスマス・プレゼントを思い出します。そして家族で過ごすのは、クリスマス・ケーキを食べるときくらいでしょうか。オーストラリアの敬虔なクリスチャン達にとっては、もちろんクリスマスには特別の思い入れがあり、中でも家族で過ごすクリスマスが一番大事なようです。日本でのお正月に近いものなのでしょう。オーストラリアの家族の強い結びつきは、こうやって育まれていくのかもしれません。今年のクリスマスはオージー風に家族を中心に過ごしてみませんか?

今回はデビーに教えてもらったショートブレッドをご紹介します。ショートブレッドはさくさくとした歯ごたえが魅力のビスケットですが、上から真っ白なお砂糖をふりかけると、それでけでクリスマスらしい雰囲気に生まれ変わります。手軽に出来るので、皆さんも今年のクリスマスに作ってみてはいかがでしょうか。

ショートブレッド(Shortbread)

材料
バター…100g
砂糖…50g
小麦粉…150~200g

■作り方

1.

バターと砂糖を白くなるまでよく混ぜる。

2.

ふるった小麦粉を加え、ひとかたまりにする。

3.

ラップに包み、冷蔵庫で20分休ませる。

4.

麺棒で20cmの円形にのばし、フォークで全体に穴を開け、ナイフで切れ目を入れる。

5.

170℃のオーブンで10~15分焼く。



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