緊急時の救命活動知識を普及し
“命をつなぐ”大切さを説く。

 

伊東和雄さん
マスターワークス代表

 

ケアンズで輝く人〜伊東和雄さん

Profile

伊東和雄 いとう・かずお
東京出身。1989年、ケアンズでダイブショップの立ち上げに携わった後帰国。ファーストエイドの必要性を痛感し、独学で学びながら、教材作成から講習までを一貫して行うマスターワークス社を設立。自動車産業、保育士研修、ダイビング業界などを対象に事業を展開。SUPER GTレース安全運営やF1レース観客救護運営ほか、早稲田大学スポーツ科学部の非常勤講師として教鞭をとるなど幅広く活動する。

 

 「突然目の前で誰かが倒れたら、あなたはどうしますか?

 

そんな現場に立ち会ったとき、最善を尽くすための救命スキルを1人でも多くの方に身につけてほしいんです」。 

 

ダイブインストラクターとして、"緊急時に命を守る応急手当" の大切さを身を持って知った伊東氏は、知識伝導のため全国を奔走する。

 

「今、自分がしなければならないのはこれだ!」とファーストエイド普及に向け、起業

2年ぶりのケアンズ。彼は、ダイビング業者の前で、学会で仕入れたばかりという国際蘇生連絡協議会の最新情報を講義した。

 

「心肺蘇生はしっかりと、絶え間なく圧迫し続けて、脳に酸素を送り続けることがとても大切。筋肉などと違って中枢神経である脳組織は低酸素に弱いからです。」など、生存率向上に貢献するスキルについて熱く語る。

 

2時間近いレクチャーの後、誰もが人の命の重さを痛感し、ファーストエイドは人ごとではない、という思いを持ったはずだ。

 

 

伊東氏が一寸を惜しんで普及を続ける「命をつなぐ」というテーマが示されたのは、ここケアンズだった。1989年、知人に依頼されてダイビングショップの立ち上げに携わり、自ら海に出る中で、海上では医者任せでなく、自分の命は自分で守るという認識と行動に触れたのだ。

 

ところが、契約を終えて帰国した日本は、まだ当たり前のことが当たり前に行われていない時代。
「ダイビングの指導は楽しかったけれど、自分じゃなくてもできる。今自分がしなければならないのはこれだ!」と応急手当(ファーストエイド)を普及させる事業を興す。

 

1990年当時、幼稚園や企業に営業へ行くと「間に合ってます。何かあったら連絡します」といった反応がほとんど。「命に関わることなのに、医者じゃなくていいの?」と言われたり、「一般人にやらせるな」とまで言う医師もいた。

 

「弁護士のアドバイスを得て、違法ではないという理論はあったのですが、反論はしませんでした。日本の文化そのものを変えることはできない。ならば理解してもらえない人にエネルギーを使わずに理解してくれる人を探して行こう、と思ったんです」何より自分がしていることは正しいと信じていた。

 

営業活動を続けながら、各国で行われる学会に頻繁に赴き、専門書を買いあさり、英語に苦労しつつも膨大な資金と時間を費やして、独学でファーストエイドの知識を深めていく。

 

ケアンズで輝く人〜伊東さん日本とマレーシアで行われているSUPER GTレースにおいて、安全運営を担当。写真は冨士スピードウェイにて待機のドクターヘリ。

 

 

経営に風穴を開けたのは、以前勤めていたブリヂストンの広報課長の理解だった。「当時は自動車事故で14,000人の方が亡くなっていた。データを見せて、"タイヤのシェア50%を占める御社は、この数字をどうやって償いますか?僕にモータースポーツの現場でファーストエイドの講習をさせて下さい。"と半ば脅しで懇願したんです(笑)」

 

もちろん広報課長を動かしたのは、氏の「人命を救いたい」という真摯な願いに違いない。この後、本田技研、トヨタ、ニッサン、ダンロップといった錚々たる企業がスポンサーに。17年を経た現在も、サーキットの職員に向けた講習やスポンサー企業の社員研修を続けている。

 

現在、車業界は大変な状況にあるが、ある企業から「この講習のスポンサーシップは最後まで守り抜きます」と言ってもらえたという。どれだけ重みのある活動をしてきたかを物語るコメントだ。

 

 

限られた時間の中で
自分がするべき役割を常に考えて

一刻を争う緊急の現場にあって、医療資格を持っていないことが引っかかった時期もあった。が、応急手当は、医師の手にかかるまで命をつなぐ行為。その場で最善を尽くす「命のリレー」の第一ランナーなのだ、とポジショニングしてふっきれた。

 

現在は、AED(自動体外式除細動器)用アラームケース開発、保育士研修センターやモータースポーツ業界での講習をはじめ、SUPER GTレース安全運営、F1レース観客救護運営、さらには早稲田大学スポーツ科学部で非常勤講師として教鞭をとるなど、まさに八面六臂の活躍ぶり。 

 

ケアンズで輝く人〜伊東さん自動車関連各社の支援により、2500円で参加できる一般向けて行き講習会も開催。心肺蘇生やAEDなどを実習し、修了すると認定証をもらえる。

 

 

 

 

 

「子どもの事故と応急手当」「緊急時の応急手当と事故防止」など、一般の人でも知識を得ることができる本やDVDも出している。

 

「その場、その時間でできることは限られています。社会の大きな流れの中で自分がどういう役割をすれば貢献できるのか、と考えて活動しているんです」

 

早稲田大学から話が来たときも、教職を持っていない自分が?とは思ったが、「多くの人に伝えるチャンス、遠慮していたら世の中にマイナスだ」とばかり快諾したとか。「受講者1人1人が伝道者、という気持ちですね。日本の社会を担う学生さんたちが、大切な人の命を守る役割を認識してもらえたら、その意義はとても大きいと思います」

 

 

 

 

「命をつなぐ」大切な知識を1人でも多くの人に伝えたい

起業した頃に比べて、世の中が変わってきたなと感じるという伊東氏。ファーストエイドの重要性は少しづつ、けれど確実に浸透し始めている。

 

「20年間、普及活動をしてきて思うのは、事態が魔法のように突然良くなることはありえない。センセーショナルなことを狙うより、自分の役割を知ってそれをやり続けたい、ということ。ただし1人の力で及ぶ限度は知れているので、本当の信念を伝え、共感してくれる後継者に活動を続けてもらう基盤を作ることも仕事だと思っています」

 

「危険だとわかっていても、スポーツとして、人生のメリハリとしてやってみたい、という想いを持つ活動ってあると思うんです。ケアンズでの自然の中でのアクティビティもそう。そんな時は、危険を承知して準備をすればいい。」ファーストエイドの知識は、人生の幅を広げる上でも重要なのだ。

 

「難しい、あるいは専門的なことは何もありません。誰もが身につけられることばかりです。ご自身と取り巻く全ての人々の幸せのために、ぜひ応急手当の知識を役立ててください」

 

 

ケアンズで輝く人〜伊東さんのウェブサイト伊東さんが代表を努めるマスターワークス社のウェブサイト

ファーストエイド講習のお知らせや、教材の購入も可能。

 

 


 

社会の役に立つ仕事を信念を持って続けている方からは、内なるエネルギーと泉のように沸き上がる智慧を感じます。「聖職者でも何でもないんだけど」とおっしゃいますが、伊東さんの言葉は、節々に人の命を助けたいという想いがあふれていて、知識を伝える姿はまるで聖なる教えの伝道者★ 子どもを産んでから、ファーストエイドの講習を受けようと思いつつ12年近く過ぎてしまった私も、伊東さんにお会いして本気になりました。ケアンズで普及をお手伝いする方向で進んでます。Keiko

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命をつなぐ緊急応急手当の知識を普及

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