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第17回
眠れぬ夜




体が短い間に熱を帯びてきたのを体内で感じる。
 
それと同時に吐き気をもよおしてきた。
 
寒気が間隔を作って背筋を伝って襲ってくる。
 
便意をもよおす感覚がだんだんと短くなり、トイレでお腹の激痛に耐えながらうずくまる。
 

 
うう、、つらい、これは初めての経験だ。
 


ミーガンが心配し、バナナやお粥を用意してくれたり、薬を飲ませてくれたりしてくれたが、体が受けつけてくれない。
 
 
これまでの一ヶ月間の僕のお腹は実に平穏であり、快適に旅をしていた。
 

それが、晴れていた天気に除々に忍び寄る黒雲のように僕の体の内部に浸透し、大雨を降らし、雷をお腹に落とす。
 

 
突然、
 
ゴロゴロ、ゴロゴロと!!
 

 
次第に脂汗が顔の横をつたい、額は湿気を帯びてくる。
 
夜中1時になってもこの状態は変わらなかった。
 

これはさすがに、苦しい!!
 
 
2時を過ぎて空前の大ピークを迎えた!
 
遂にトイレから離れられなくなり、トイレットペーパーが底をついてきた。
 

 
お腹は体内で悲鳴をあげ、痛みが走る。

この状態がこのまま終わりなく続くような気がしてくる。
 

 
まるでゴールが見えない長い長いマラソンのようだ。

しばらく痛みと気持ち悪さを我慢する。
 

 
夜中3時をまわってやっと折り返し地点が見えてきた。 

この小休止の為にベッドに帰還、間接の痛みをこらえつつ、睡眠を取る。
 

 
それでも日が昇ると同時に僕は所定の位置に付き、うずくまる。それも僅かなトイレットペーパーを抱えながら。
 
 
朝のカレーはもう食べられなかった。
 
その代わり、携帯していた即席味噌スープを口に流し込む。その日食べたのはこれだけ。
 
 
デリー行きの予定を伸ばし、しばらくここに滞在するしかなかった。
 
 
心配してミーガンは一日中そばにいてくれ、ここの宿の娘PRETY(プリティー)がチラチラと顔を出してくれ、医学生のケンジ君がバナナのさしいれを持って来てくれた。
 
彼は僕の前にこの腹痛を経験しているので、僕のつらさを十分に理解してくれているようだ。
 

 
みんなの心遣いが痛みを癒してくれているようだった。
 
 
トイレットペーパーをミーガンに買って来て貰い、それでもまたこの日の長いマラソンが始まる。
 
 
トイレに行き、ベッドに戻り、トイレでうずくまり、ベッドでうずくまる。
 

 
単調なローテーションを繰り返す。
 
 
この状態が2,3日続いた。
 

 
僕の体は痩せこけ、この数日でかなりの体重が落ちた。あばら骨が出てきて、鏡を覗くと顔の頬がこけていた。
 
 
それでもゴールは近づいた。少しづつ食事が摂れるようになり、少しづつ間接の痛みが和らいできた。
 

そう、いつまでも曇り空ではない。希望の太陽の光りが、厚い雲の切れ間からこぼれだすように、好転する時が必ず来るのだ。
 
 
“こんな所で時間を費やす訳にはいかない”と思った。 
 
 
その日の朝、ミーガンの心配をよそに、きしむ体を起こし出発の準備をする。
 
 
デリーに向け出発する準備をしなければ。
 
 
このゲストハウスのみんなにさよならを告げ、ここの玄関の扉を通過した。



 

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SEIJI YAMAUCHI プロフィール
1997年オーストラリアから旅を始め、半年間東南アジアを陸路で巡り、次は中国からロンドンまでのユーラシア大陸撮影旅行、陸航路横断を達成する。その後ケアンズに4年留まり、絵画展、写真展、オリジナルパフォーマンスアートを展開、2005年リビングインケアンズの表紙、インタビュー撮影を担当、カジノや公共でのダンスパフォーマンス、ミュージカルにも出演。2006年の2月からインド一周、パリ、中国を撮影し、日本に帰国後、写真集旅日記を出版する予定。2006年10月に浜松でオペラ歌手とピアニスト共演のコラボレーションパフォーマンスがすでに決定している。

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これまでの連載

2006-01-25 第1回 ケアンズからインドへ

2006-02-04 第2回 インドへ 出発

2006-03-07 第3回 列車の旅

2006-03-21 第4回 太陽と埃と野良牛の国から

2006-04-04 第5回 アーマダバード・1

2006-04-18 第6回 アーマダバード・2

2006-04-26 第7回 水上宮殿に泊まる・1

2006-04-26 第8回 水上宮殿に泊まる・2

2006-05-29 第9回 マウントアブーの奇跡

2006-08-28 第10回 ブルーシティ(Blue City)

2006-11-06 第11回 街の太陽 ジャイサルメール

2007-02-26 第12回  ビカネーの砂埃

2007-05-24 第13回  聖なる湖プシュカルへ 前編

2007-07-12 第14回  聖なる湖プシュカルへ 後編

2007-11-12 第15回  金絡みの領域 ジャイプル (前編) 

 

 

2008-03-12 第16回  金絡みの領域 ジャイプル (後編) 

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