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2003年9-10月号・其の58 ブームの仕掛人

2007年09月05日

チョイト見せたいものがある、と言いながら娘が持ち出してきた物は、新聞の半ページ位の大きさの不動産広告。あまり興味もなかったのでヨクも見ないまま、見覚えがないか、と問う娘に、ウンウンと生返事をしていると、娘、呆れたように、
「チャンと見なさいヨ。コレ、私の家だったンだヨ」

娘達が郊外に広い土地を購入して新居の準備に取り掛かったのが、昨年の10月。それまで住んでいた家は小綺麗なクイーンズランダーだったので、場所も良 かったし、売り急ぎするなヨ、と言っておいたのに、新居の図面を引いた段階で早速売りに出してしまった。値段も安過ぎる。案の定その翌日、ポンと売れた。 購入者は南から転勤になったという夫婦者で、至急住める家を捜していたと言う。私には、多分そういう名目で投資物件を捜しているのではないか、とも感じら れていた。

成る程、よく見るとチョイト手を加えてあるものの、娘の以前の家だ。
「ホラ、私のカーテン、まだ使ってあるヨ」 売り値、35万ドル。持ち主が急に南に転勤の為、手放したくはないが至急売りたし、とある。やはり投資家だっ たナ、と思ったが、もうそんな事は他人事だ。娘達から購入後1年ももたない内に売りに出し、7万ドルを上乗せしてある。チョット悪どいゼ、と思ったけれ ど、これが今日の相場ならば、私なんかが文句を言うスジもあるまい。

私の空手道場に現在、不動産関係者が3人いる。建売りの業者は、1ヶ月に4件の契約が取れれば何とか生き残れる。ところが7月中は20件以上の契約。以 前に家を購入した客が値段が上がったので売りに出し、その分少しいい家に建て替える例がかなりあるらしい。不動産販売の生徒は、早く売れるので売る物件が 少ない、とこれ又嬉しい悲鳴。

娘の新居は7月に完成。もう移り住んだ。ところが1ヶ月も経たない内に、アチコチ業者の手抜きが見えてきた。
安い家ではない。それなのにシャワーの排水が悪かったり、屋外に出すべき臭気孔が天井裏に開いている等という非常識的ないい加減な仕上げぶりだ。業者に 文句を言っても、もう金は先渡し済。仕事はいくらでもある。小さな修理なんかに時間はとれネェよ、テナもんで、このケインズでアフターサービスを期待する 方が、まァ無理というものだ。
娘が同僚にその話をすると、
「アンタの所はまだイイヨ。私んとこ、4年前に建てたけど、まだ悪い所直してくれないヨ」待つ方も待つ方。
こんな町に住んでいると、ある程度気長くやる気持ちがないとやってられネェヨ、と思う事にも、もう慣れっこになってしまった。
それにしてもこの不動産ブーム。しかしこれをブーム、と呼んでもいいのかナ、とも思う。

ケインズの不動産が下降線を辿り始めたのが10年前。それからは下がる一方。あちこちの建築業者がつぶれ、あふれていた不動産業者もかなり姿を消した。 豪州は面積は大きいけれど人口は少なく、その地方のリーダー的存在になる都市の数は知れたものだ。その意味では大きくてもいかにも小さい国なのだ。

ブームの切っ掛けは投資家がつくる。人口の少ない豪州の投資家の数には限度がある。だからこそ彼等がタライの中の水のように、片側が上がると同じ水が反 対側に移動し、又、逆に戻ってくるという動きを、周期的に繰り返す仕掛人ともなり得るはずだ。つまりシドニーなどの大都市が落ち着くと、彼等の目は株か地 方に向く。地方が静かになると、元に戻る動きが出てくる。

シドニー、メルボルン域の不動産の急騰ぶりは、3年程も前から徐々に落ち着いてきた。それに拍車をかけたのがアメリカのテロ。株価がドッと落ちた。仕掛 人の目が地方に向かないはずはない。まずブリスベンとその近郊が動き始め、余波は1年位前からケインズにもやってきた。

地方のブームは普通3年。よく持って4年。という事はここ2年程はケインズの不動産ブームは続く、という予測が出てくる。投資として家を購入するのな ら、2年以内に売る方がいい。逆に自分の家の購入は、この高値の時期に、銀行等から融資を受け無理して入手すると、数年後には値が落ちて気苦労の種になる 可能性も大きい。

私はまだケインズに28年しか住んでいないけれど、この田舎町の移り変わりをジックリと見つめてきた。今のこの町は見違えるように便利になり、日本人居 住者の数も増えてきた。その反面、出費や経費は増大し、税金対策も難しくなった割には、収入の増加は少ない。私の道場のメンバーは、ほとんどが自営業。ビ ジネス間の競争も激しくなったので、以前と同じ収入を得る為には、さらに長時間働かなくてはならない。子供のクラスは多過ぎて困る位なのに、大人の減少で 一般の生活ぶりがタイトになってきた事が感じられる。ケインズはもうノンビリした以前のような田舎町ではなくなってきた、という事だ。

私の生徒の1人に、最近大きな家を購入した男がいる。その家の持ち主、夫婦別れをしたそうで、まったく手入れされていなかった為、3階建ての10部屋も ある凄い家なのに、50万ドルをきれる値段で入手したそうだ。数ヶ月間自分でコツコツと修理し、見違えるようになった。1年間住み、その後すぐに売りに出 すという。多分70万ドル以上の値が付くはずだ。1年間、自分の持ち家として住むと、売った時点で税金はつかない。1年間の利益としては悪くはない話だ。

豪州人達、よくボロ家を出来るだけ安く購入し、そこに住みながらコツコツと自分で修理する。1年経って売りに出す。これを繰り返してその都度レベルを上 げてゆく。狩猟民族末裔の彼等は、1カ所に執着しない。平気で精力的に、簡単に移動する。その土地に定住する農耕民族末裔の日本人には、なかなか真似の出 来ない生き方だ。

娘の新居のすぐ隣は私の土地だ。そこに我々夫婦の家も建てることになった。家の図面も出来上がったのに、私はなにやら気乗りがしない。糞面倒くさいし、 今の家でも十分に快適だ。その点、妻は頑張る。新居の設計もほとんど1人でやったし、気分転換にナルゾー!と意気盛んである。農耕民族末裔でも、芯は女の 方が強いのかも知れネェナー、と再認識しているこの頃だ。

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